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  • ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【03】・基本的な目的

    ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【03】・基本的な目的

    順番に内容を整理
    GPTの整理では、
    1. ストーリーボードの基本的な目的を理解する

    • 目的の説明: ストーリーボードは、映像のシーン構成やカメラワーク、キャラクターの動きを視覚的に整理するためのツール。シナリオから映像化の第一歩であり、アニメーターや制作スタッフとの共通言語となるものだと説明します。
    • 具体例の紹介: 完成したアニメーション作品のストーリーボードと映像を比較しながら、どのようにストーリーボードが映像に変わるかを実例で見せます。

    アニメーションというか我々が作っている商業アニメーション(この様式に対する明確なネーミングはないのは問題だ)を制作する上でストーリーボードがどの様な役割を担っているのか整理する

    • 実際に制作する映像を視覚的にわかる様に計画する
    • 物語全体の時間の想定または算出。全体の時間をどの様に分割するか、しないかを計画する。
      分割単位は大きくシーンとカットがあるが、シーンはシナリオで既に想定されているので、基本的にはカットの単位で分割を考える
    • 映像内で起こる事象の提示(場所、演技、その他主要な映像に写すことが必要な事象)
    • 事象をどの様に映し出すかの提示(フレーミング、カメラワークの提案)
    • 部分、全体の作業負荷の想定、見通しを立てる
    • 音響についても大まかに想定する場合がある

    演技をストーリーボードで想定するのは、日本のアニメの多きな特徴。
    実写だったら俳優の演技があるので、演出家が事前に想定する部分は限定的だ。
    日本のアニメは作業負荷の想定やキャラクターの統一などの理由から、かなり踏み込んだ部分まで演技が描かれる場合がある。
    作業者の負担になる部分でもあり、面白いところでもある。

    大まかな項目としたらこんなところか?
    ストーリーボード作成の目的自体は初心者にも比較的容易に理解可能だろう。
    ただ実際のストーリーボードは、作品や監督などによって「どこまで踏み込んで考えるか」や「重要な要素」が大きく違う。

    しかし演技、撮影効果、音響など、何をどこまで想定するのがストーリーボードの役割なのか、初心者にはある程度明確にしておくべきだろう。

    あくまで商業アニメ制作に絞って、その役割をもう少し整理してみる

    時間の算出
    演出家を仕事としている身としては、このことが非常に重要だ。
    何故なら、尺が足らなくてもオーバーでも商品としては成立しない。

    映画であれば厳密なフォーマットは存在しないものの、90分と120分では、製作費が変わってくるし上映可能回数も変わってくる訳で、適切な尺に収めるのは管理職としての演出家に常に求められる。

    しかし、超初心者に教える場合や、演出の概念やストーリーボードの仕組みを教えるだけであれば、あまり教える必要はない。
    実際、学生の時はこんなことを言われたことはなかった。
    プロになってからは、尺が上手くコントロールできなくて冷や汗をかいたことが何度となくあるのだが…。

    とりあえず各項目ごとに、これは初心者に必要か?ということを整理していくしか無いかも。

    ・演技の想定
    これは結構、初心者でなくても難しい項目。
    初心者にストーリーボードを教える場合、実は「演技については考えさせない」方がストーリーボードの仕組みはわかりやすいかもしれない。

    映像のつながりを想定するだけであれば詳細な演技は必要ない。
    ただ画面内のキャラクター(人物)の位置が想定されていれば良いだけである。
    実写の様にカメラが移動して構図が変わる場合でも、見かけ上のキャラクターの位置が分かれば繋がるかどうかは判断がつく。
    キャラクターが移動する場合でも、同じく画面内の見かけ上のキャラクターの位置が分かれば良い。
    芝居を一緒に考えると混乱したり、映像の繋がりについて忘れたりしがちだ。

    しかし実際のアニメの現場では、演技の想定が演出家というかストーリーボードを描く人間に強く求められている。
    理由としては、
    ・全体の作業量の想定
    ・キャラクターの統一
    ・アニメーターが演技を考えてくれない、あるいはその時間がない
    などがある。

    これは初心者がストーリーボードを学ぶ際に結構足かかせになっている気がする。

    初心者に教える場合は、ストーリーボードで求められる演技について整理しておく必要があるやに思う。

    抽象的にも具体的にもなりすぎない様に、ストーリーボード作成の目的を整理しなくてはいけない。

    そしてそもそも、誰に教えると想定するのかハッキリさせる必要がある……のだが、超初心、初心、中級者でだいぶ内容が変わってしまう。

    今回はここまで。


  • ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【02】

    ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【02】

    chatGPTが出してきたストーリーボードを新人に教えるための項目

    1. 目的の理解
    2. シナリオの解釈とシーンの分解
    3. カメラワークの基本
    4. 構図とレイアウト
    5. キャラクターの動きと表情
    6. シーンの繋がりとテンポ
    7. 映像言語の使い方
    8. ライティングと影の活用
    9. 音響や音楽の考慮
    10. フィードバックの受け入れ方

    これはこれで的を得ていると思いつつ私が普段教える時は、以下のような要素を意識している。

    1. カメラの高さについて
    2. サイズの選択について
    3. 写す対象について
    4. イマジナリーラインの理解
    5. 二人の会話
    6. 三人(多人数)以上の会話

    これだけ。これだけというか、2人の会話も3人の会話もイマジナリーラインのサブ項目なので、大体4項目。
    普段は描いたコンテとシナリオをもらって添削のような形で教えることが多いのだけど、やはりあまり難しいことを言っても伝わらない。ので、なるべくシンプルに教えようと心がけてはいる。
    シナリオの解釈は頭の1、2、3に関わるのだが、ここはとても難しい。

    アニメの絵コンテでは、実写では別の役職が担っている仕事を一手に引き受けているため、新人さんは混乱してしまうことが多いという気がする。
    ・映像のつながりを決める
    ・キャラクターの演技を作る
    このうち演技の方は、実写では主に役者が担っているのだけれど、アニメの場合演出家(の描いた絵コンテ)でかなりの部分を想定することを要求される。
    この演技を考える部分が、かなり難しくて教えるのにも困難がある。私もあまりまともに教えられる気がしない。
    しかし、映像のつながりを決める部分に限定するとそれほど難しくは無いのではないかと思っている。
    まずは、この2つを分けて考えることがストーリボードの理解の助けになるのではないか。
    その場合、シナリオの解釈はどこまで必要なのか?
    シナリオの読み方をそもそも先に教えた方が良いのではないか?
    という気もしてくるが、それはそれで大変なことなので、なるべくシンプルに同時に教える方向で考えてみたい。

    シナリオの解釈を教える場合、「誰が、どこで、何を、どうした」5W1Hの理解と表現が基礎。
    あとはキャラクターの感情とそのつながりの理解。

    演技はそれ単体で非常に奥深い技術が蓄積されていると思うが、私は詳しくないので調べる必要あり。
    演技メソッド的な本はたくさん出ているのである程度漁ればざっくり把握は可能かと思われる。
    アニメの演技は表現の幅など人間のそれとは違う。
    またアニメ的キャラクター独特の表現の難しさ(視線の問題など)があるので、そこは教えられると良いかもしれない。

    絵的な表現についても私はあまり詳しくないので、ざっくりと調べる必要あり。
    パース、構図の一般的な技術など。

    ・対象の選択
    超初心者向けに教える内容と中級者以上向けに教えるのでは内容が大幅に違ってくる。
    まずは超初心者向けの内容について考えてみるか。

    やはり重たいが、まあ進めてみよう。

  • ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【01】

    ストリーボード作成で学ぶ演出(のための準備)【01】

    たまーに若い子に絵コンテを教える機会もあり、なかなかオーソドックスな絵コンテのスタイルや描き方は教えられていないのだなと思うことがしばしばあった。
    なので、絵コンテに興味がある人向けに教育的メソッドを作ってみようと思い、しかし一から作るの手が掛かるのでどうしたものかと思っていたが、電車の中で半分暇つぶしに、絵コンテ制作を新人演出に教えるアイデアを提案せよとChatGPTに投げてみたところ、意外とまともなアイデアが返ってきて大変驚いた、と共にこれを叩き台にして作れば、あまり時間をかけずに出来るかもしれないと思ったので早速始めてみることとする。
    以下はchatGPTの提案である。

    ChatGPT
    新人の演出家にストーリーボードの描き方を教える場合、基本的な技術から応用まで段階的に教えることが効果的です。以下の順番で教えると、理解が深まりやすいです。

    1. ストーリーボードの基本的な目的を理解する

    • 目的の説明: ストーリーボードは、シナリオを視覚的に整理し、映像の流れを決定するツールであることを説明します。キャラクターの動きやカメラの視点、シーンの構図などを計画し、チーム全体に作品のビジョンを共有するために使われることを強調します。

    2. シナリオの分解と解釈

    • シナリオの分析方法: まず、シナリオをシーンごとに分け、必要な演出要素(アクション、対話、感情表現など)を把握する方法を教えます。
    • 重要シーンの特定: ストーリー全体の中で特に重要なシーンやクライマックスを特定し、その部分を重点的に描く技術を学ばせます。

    3. カメラワークの基本

    • 視点とアングルの基礎: 視点(主観/客観)やカメラのアングル(高い視点、低い視点、横からなど)の違いが映像に与える効果を説明します。
    • カメラの動き: パンやズーム、トラックなどのカメラの動きをストーリーボードでどう表現するか、動きに合わせてシーンをどう切り替えるかを教えます。

    4. 構図とレイアウトの基礎

    • 三分割法や視線誘導: 三分割法などの基本的な構図のルールや、観客の視線をどこに誘導するかを学びます。
    • 空間の使い方: キャラクターやオブジェクトの配置が、シーンの緊張感や動きにどのような影響を与えるかを説明します。

    5. キャラクターの動きと表情の描写

    • アクションの分解: キャラクターの動き(歩く、話す、戦うなど)をどのようにコマ割りで描くか、動きの流れやスムーズさを意識したストーリーボードの作り方を教えます。
    • 表情の変化: キャラクターの感情を伝えるための表情の変化をどのように描き、シーンに反映させるかも重要です。

    6. シーン間の繋がりとテンポ

    • シーンの切り替えと繋がり: シーンのスムーズな切り替えや、ショット間のテンポの取り方を説明します。カット間のリズムやテンポ感が、視覚的な効果や感情の高まりをどう変えるかを学ばせます。
    • テンポとリズムの重要性: アクションシーンと静かなシーンの対比や、リズムを意識した編集の仕方を教えます。

    7. 効果的な映像言語の使い方

    • 象徴やメタファーの導入: ビジュアルに意味を持たせる方法や、観客に暗示的に伝える演出手法を紹介します。たとえば、特定の色や形がシーンにどのように意味を加えるかを学びます。
    • サブテキストの表現: キャラクターが話している内容以外の、裏の感情や状況を視覚的にどう表現するかを教えます。

    8. ライティングと影の活用

    • 照明効果の理解: 光の当たり方や影の使い方が、キャラクターやシーンの感情にどのような影響を与えるかを説明します。
    • 時間帯や天候の表現: ストーリーボードで時間の流れや天候の変化をどのように描写するかを学ばせます。

    9. 音響と音楽の考慮

    • サウンドキューの入れ方: ストーリーボードには音響や音楽の指示も含める場合が多いため、どのタイミングで音が入るか、シーンに合わせた音響演出の指示を追加する技術も教えます。

    10. フィードバックの重要性

    • フィードバックを受け入れる姿勢: ストーリーボードはチームで共有するものであり、他者からのフィードバックを受けることが重要です。建設的な意見をどのように反映させ、より良いストーリーボードにするかを教えます。

    教える順番のまとめ

    1. 目的の理解
    2. シナリオの解釈とシーンの分解
    3. カメラワークの基本
    4. 構図とレイアウト
    5. キャラクターの動きと表情
    6. シーンの繋がりとテンポ
    7. 映像言語の使い方
    8. ライティングと影の活用
    9. 音響や音楽の考慮
    10. フィードバックの受け入れ方

    新人には、まず基本的な要素を学ばせ、徐々に複雑な技術やクリエイティブな要素に移ることで、全体的な理解を深められるようにすると良いです。

    とのことだった。
    かなりそれっぽい。
    イマジナリーラインについて触れられていなかったので、

    あなた:イマジナリーラインについて教える場合、上記の項目の中の何処に追加するのが良いですか?
    と質問すると以下の答え。

    ChatGPT:
    「イマジナリーライン(180度ルール)」は、カメラワークの基本シーン間の繋がりとテンポに密接に関連しているため、これらの項目の間に追加するのが良いです。
    具体的には、以下の位置に追加することを提案します:

    3.5. イマジナリーラインの理解

    • 180度ルールの説明: イマジナリーラインとは、シーンにおけるキャラクターやオブジェクトの位置関係を保つために、仮想的に引かれる線のことです。カメラがこのラインを越えて位置を変えると、観客がキャラクターの位置関係や動きを混乱する可能性があるため、基本的にはラインを超えないようにします。
    • シーンの連続性: イマジナリーラインを守ることで、視覚的な連続性が保たれ、観客が自然にシーンを理解できることを教えます。
    • ルールの活用と破り方: ルールを意図的に破って感情の変化や混乱を演出する方法もあるため、その使いどころについても説明します。

    このように、カメラワークの基本に関連した要素として教えるのが最も自然で効果的です。カメラアングルや視点と密接に結びついているため、このタイミングでイマジナリーラインの概念を導入すると、より理解が深まります。

    なるほど…と感心。
    これをさらに詳細にしたアイデア出しもしてもらったのだが、一般的に教えていそうな項目を多数並べてくれた。
    が、詳細になるほど抽象的になっている印象。
    しかし、根本的なことには何も触れられないまま、理屈めいた映画の理論が教えられていることは今も普通に起こっていそうな気がする。

    そもそもの話ではあるのだけれど、映像文法は数学のようなものではない。
    音楽のメソッドなどに近い。
    短調は長調に比べると暗く聞こえる、と言われているが、それは数学の法則のように理由が説明されているわけではない。(認知心理みたいなもので説明を試みられてはいるのかもしれないが)
    ポップスのコード理論なんかも、こういうフワッとした経験知的なものをベースに作られていると思うのだが、映像文法も似たようなものだと思う。
    ほとんどの事は経験的な感覚を下敷きにして作られているので、時代によって変わることもあるだろう。
    歴史、積み上げてきたものが大事なのだ。

    理論は割とフワッとしたまま、感覚だけで作品を作っている演出家も少なくはないと思う。
    私も大学で多少教育は受けたもののかなりフワッとしたまま、言語化しないまま仕事をしている部分も多い。
    しかし、経験に頼りすぎるのは若い人が演出を学ぶ時、人によってはえらく時間がかかってしまう原因になりやすいように思うし、全く出来ないまま終わるということにもなりかねない。
    映像文法は今まで人間が「映像から物語を理解する」にはどうしたら良いかという経験知の集積なので、そういう意味で有用だと思う。
    私は映像文法の基本部分は極めて簡単だと思っていて、骨格だけ覚えたら、あとは経験値で膨らませ応用を考えていく他にないように考えている。

    GPTが挙げていることは重要だが、「物語を映像で表現する」ための方法という映像全般の技術の中の限定的な分野の事でしかないので、全部を理解している必要はないし重要度も項目によってかなり違う。
    4の構図とレイアウトについてなどは私の場合はかなりいい加減に考えている。

    色々整理しながら、初学者が分かりやすいようにと、形式主義に陥らないように演出の基本をストーリーボード(絵コンテ)作りから学べるような方法を考えてみようと思う。

    まずははここまで。