少し休息【2023年10月23日】

恩返し的に引き受けたコンテの仕事が片付き、やらなければいけないことはあるもののしばし緩やかな流れになった。

津村記久子「水車小屋のネネ」を読了。

とても良かった。

ヨウムという50年近くも生きるという鳥とそれに関わる人たちの人生を10年おきに切り取って2011年まで描いている。

1981年から始まるので私は主役の姉妹の妹の方に年齢が近く、描かれる時代は馴染み深いのだけれど現代的なテーマを持ったとても良い小説だと思う。

ちょっとずつの優しさを持ち寄って人が寄り添って生きる様を描いていてじわっと心に残る物語。

昨日は東京バレエ団の「かぐや姫」を観劇。

金森穣 氏に興味があったので見にいってみた。

ディズニーのファンタジアを見ている様で美しかった。

人間の体はこんなふうに動くのか、という感慨がある。

揺れる竹林の舞踊が一番気に入った。

昭和の時代、というか黎明期の商業アニメはヨーロッパ由来の伝統的な表現に凄く影響されていたんだなとつくずく感じる。

ディズニーの影響で始まっているのだし、それはそうだよなというもんだが。

今は音楽も含め随分多様になってきたと思う。

けど、まだまだ出来ること出来てないことは山ほどある。

ゆるゆると仕事の中で挑戦できると良いなとは思っている。

寒暖差が激しいので体調には気をつけましょう。

涼しくというか寒くなって【2023年10月16日】

急に寒くなってしまいましたね。

今週は打ち合わせが飛んで家で引きこもって仕事。

おかげで手持ちの案件はもう一息。

読書は東畑開人「ふつうの相談」読了、もう少し一般向けかと思ったら割とガチに心理職の人向けの論文。専門用語はそこまで多くないので一般の人も読めると思うが、心理職の扱う対応の選択肢としての「ふつうの相談」とはどういうものなのか、という話で基本的には専門の人に向かって書かれていた。が、個人的には興味深かった。

津村記久子「水車小屋のネネ」を買ってきてパラパラとめくり始める。面白そう。

週末は劇団ロロ「オムニバス・ストーリー・プロジェクト」観劇。1分くらいから5分くらいまでの短い話がどんどん舞台上で語られていくという構成で非常に面白かった。役者さんもどんどん別な役に乗り替わっていったり、美術は見立てが変わって違う場所を表現していく。

三浦さんの舞台は常に違う時間や場所が同じ舞台の上に重なっていくような表現をするけれど、それが端的に普通の人にも分かりやすい形で提示されていた。

アニメも向いてる表現だと思うけど、やっている作品を見た記憶はあまりない。でも有名なところだと「おもいでぽろぽろ」の主人公と幼い日の主人公が同じ画面に同居させているというような例がある。

私も挑戦してみたいけど…なかなか。

枝松聖さんの展示にもいった。SNSでは交流があったのだけど、初めてお会いした。

仕事の幅が広くて感心。ハードなSF系の作品から子供向けまで美術設定からプロップ、メカ設定まで。

アイドルマスターミリオンライブ1話も観た。労作。

私の監督作の現場がぼちぼちと動きそう。

楽しくやりましょう。

竜王戦も始まったり【2023年10月23日】

また新しい戦争が始まってしまうのか。

大事にならないことを祈るばかりである。

人は「ここ」と「あそこ」の区別をせねば生きていけぬのだろうが、線引きというのはなかなか穏便にはすまないものだし、実際には存在しない線を引くというのは難しい。

先週末はヨーロッパ企画の「切り裂かないけど攫いはするジャック」を観劇。

とにかくテンションの高いコメディで楽しく見られた。

来週はロロの新作を見る予定。

下北沢は線路沿いが随分変わっていた。

小さな店も大きな店も増えて、ちょうどアートイベントなどもやっていて楽しそうだった。

またゆっくり回って見たい。

本はイアン・マキューアンの「甘美なる作戦」(原題:Sweet Tooth)を読了。

2014年に訳された本だが、とある書評家が紹介していて面白そうだったので読んでみた。

小説をモチーフにしたスパイ小説という変わった趣向の作品で、少女小説の様な語り口だったので作者は女性かと途中まで思っていたのだが、おじさんだった。ブッカー賞も取ったことのある有名な方。

最後の畳み込みが素晴らしく、小説らしい小説で映像にするのは難しそう。

次は津村記久子「水車小屋のネネ」を読みたいがまだ買ってもいない。

久しぶりに少し小説が読みたくなったいる。

積読も随分嵩んでいるのでちまちま減らしたいのだが。

もう竜王戦も始まってしまった。

藤井聡太vs伊藤匠という久しぶりに若い人同士のタイトル戦で相がかりの難しい将棋。

20年くらい前に将棋を見始めた頃は渡辺明が森内さんを倒して初めて竜王になった頃で、竜王戦は思い入れが深い。

藤井聡太くんが現れて、急激に世代交代が進んだ感がある。

羽生さんは同世代なのだが、おじさんたちの頑張りを見るのも楽しいものがある。

竜王戦が終わるともう今年も終わりだなぁという感慨が押し寄せてくるのだが、最終局までぜひもつれてほしい。

ちょいと体調は良くない。大したことはなく歳だし仕方ない。

そして、アイカツ!放送開始から11年。

時間はどんどん過ぎていく。

精巧さ

もうあまりハイファイとか高解像度、高品位みたいなものに興味がなくなってきたのかもしれない。歳なんだろうなぁ。何せ映画館でスタッフロールの文字も読めないし。

綺麗に作ることだけで面白く見せ切るというようなことも可能だとは思うが、あまりに他の要素とのバランスを欠いているとつらい。あと誰に向かって語っているのか見えづらい作品も見ていられない。

この間、仕事の資料で読んだ小説はシンプルで面白いがリアリティのあまり無いアイデアを語り口で読ませ切っていた。なかなか上手くいくものでは無いので感心した。

一方、ある作品を見て技術はとても凄いのだが誰に向かって作っているのか分からなかった。

それは単に私には見えなかったというだけであるかもしれないが、対象でない観客にもある程度、対象の観客が見えないと娯楽としては難しいのではなかろうか。

小説の方は若い書き手が、自分の近い世代に向かって自分の面白いと思うものの熱量を上手く技術で昇華して作られていたのだろう。

歳を食うと若い観客との距離は開いていく。

アニメは主に30代くらいまでの若い観客に向かって作ることが多いので、作り手は40代を超えたあたりからの観客との距離をどう考えるのかというのは課題だ。

別に年齢に限らず観客と自分が一致するなどということは殆ど起こらない事ではあるのだが。

いくら精巧でも受けっ取ってくれる観客がいないと意味がない。

精巧に作るのであれば、その土台をよく考えないと只の徒労に終わるだろうと思う。

精巧さだけで見せ切る作品は特に長尺では難しい。

かといって土台をどう作るのかというのも、途方に暮れる様な仕事である。