月: 2023年11月

  • 省略、ロングサイズだから…【2023年11月26日】

    省略、ロングサイズだから…【2023年11月26日】

    SNSでロングサイズのキャラクターの顔の中を省略した描き方を批判している人がいるという話題を見かけた。テレビが大型化したり解像度が上がったりして一般的なテレビアニメの作画を行うA4サイズの紙に描かれたフレームの対比でロングサイズのキャラクターを描くと線が潰れてしまってなんだかよく分からないので拡大して描くというやり方が常態化して久しい。

    しかしどうもそういう話だけでもないらしい。

    そもそも省略して描いた絵を作画崩れのように感じるということのようだが、これは考えると面白いと思った。

    拡大作画というやり方は構図の中における対比より、かなり大きめにキャラクターを拡大してディティールもある程度描く。このやり方では昔のように顔の中が描かれていないのっぺらぼうのキャラクターになることはない。

    アニメは「絵」で作られるので上手く描けば省略された絵でも違和感はない、というのが昔の感覚だったのだが、それでも高解像度時代になって小さな紙に描いたものが大きな画面で見られるようになり、相当上手く省略しないといい絵に見えないというのは作り手側も一般的に感じていると思う。

    件の絵はうまく省略されているのに、違和感を感じる感想が出たということらしいのだが、これは視聴者のそもそも「アニメの絵」とはこういうものであるという認識がかなり変わってきているということの証左なのかもしれない。

    「アニメの絵」というものが絵画などとは切り離されて一つの様式の幻想を作り出しているということはありえるし、それがここ10年くらいで更新されて一般化した可能性もある。

    今のアニメの絵は、製造工程にかなり寄り添って作られている。

    変わった絵柄にすると、クオリティを維持できないし物量的にも仕上げるが難しい。

    細かな工夫は当然作品ごとにされているのだが、大きく逸脱した作品は近年かなり作りにくくなっているように思う。(例外がないわけではない)

    そういう絵に目が慣れていれば、そこから外れた絵には違和感を憶えてしまうのは当然だろう。

    デジタルでの作画に徐々に業界も移行しつつあるのだが、デジタルになって絵の自由度は上がっていくはずなのだが、それについていける作り手を育てないと新しい絵柄で作品を作るのは難しい。

    表現の幅が広がれば視聴者の感覚も広がっていくと思うが、時間はだいぶかかりそうだ。

  • 全然歩いてない【2023年11月23日】

    全然歩いてない【2023年11月23日】

    ブログなぞ、いまさら誰も読まないだろうがまあ良い。

    SNSは広告が入ったりで読みにくくて最近ずいぶん見る時間が減ってしまった。

    前は中毒気味だったのだが…。

    東浩紀「訂正可能性の哲学」読了。

    まだあまり理解できていない気はするが、とても考えさせられるテーマ。

    おわりに、の「正義なんて本当は存在しない。同じように真理もないし愛もない。自我もないし美もないし自由もないし国家もない。すべてが幻想だ。みなはそれを知っている。にもかかわらず、ほとんどのひとはそれらが存在するかのように行動している。それはなにを意味するのか。人間についての学問というの、究極的にはすべてこの幻想の機能について考える営みだと思う」に共感。

    今興味があるのは人間のつくる「境界」これも幻想の話。

    国家だジェンダーだと揺れてる境界。

    境界無しには人間は何も考えられない。

    面白い。

    アイキャッチの画像ひと月毎に変えないと見ずらいかなぁ。

  • 演出家の出自【2023年11月23日】

    演出家の出自【2023年11月23日】

    少し体調が良くなったこともあり、ぼんやりと日々が過ぎていく。

    仕事もしばらくはだいぶのんびりモードなのだが、暇なうちにやれることをやっておかないと、あとが大変のは火を見るより明らかなのでコツコツと働かねばいけない。

    SNSを見ていたら、最近はアニメーターあがりの監督が重宝されているのである、見つからなかったらその他の部署上がりの監督を探すのである、という様なことを言っているアニメ監督がいた。

    私の肌感は、最近アニメーター上がりの監督は少し減った、なのでどうも見解が違う。

    まあ、事実がどうかもどうでもいい様なことなのだが、実際どうなのだろうか。

    最近は名前を見てもどういう出自の監督か、私にはほとんど分からなくなってしまったのだが知っている名前を観測している限り、アニメーター出身が突出して多いという感じはしない。

    もともと演出家の出自は、制作、アニメーター、撮影がほとんどを占めている。その割合と変わらないという印象である。

    10数年前まではアニメーター出身の監督、演出家、特に絵コンテマンが重宝されていたのは事実だと思う。

    しかしながら徐々にその傾向は落ち着いていった。特に最近は。というのが私の肌感。

    それには幾つか理由がある。

    一つはスケジュールが大幅に改善されたこと。

    最近はまた大変な現場も増えている様だけれど、一昔前に比べるとゆったりと作っているところが増えているはずである。

    数年前から配信向けや中国向けに放送するための審査用に全てを作り終わってから納品するという作品が増えたことや労働環境の改善などの影響で良くも悪くも従来の何倍ものスケジュールで作る、あるいはそれだけ長いスケジュールがないと作れないという状況になっている。スケジュールの長期化や発表されてないが制作に入っている作品の数が増えたために、さらに長期化するという様な悪循環も起こっている。

    スケジュールとアニメーター出身の演出家が重宝されることに何の関係があるのかと思われるかもしれないが、大いに関係があった。

    スケジュールが無いとコンテ撮という主に絵コンテの絵を使った映像でアフレコを行うことがある。

    この時、アニメーター出身の演出家の描いたコンテの方が圧倒的に見やすい。

    アニメーター出身でなくとも絵の上手な演出家はいるのだが、一部の絵があまり上手く無い演出家は絵コンテを任される機会が減ったし、若い演出家志望の人も絵が描けない人は絵コンテを任される機会が少なくなってしまった。

    しかし、スケジュールが伸びてアフレコで絵コンテの絵でアフレコする必要がなくなれば、絵コンテの絵が上手かろうが下手だろうが面白ければ良い。

    また、スケジュールが無くても絵のクオリティを上げるためにアニメーター上がりの演出家が重宝されていたという側面もある。

    スケジュールが改善されれば、演出家が絵に手を突っ込んで下手にスケジュールを食い潰すよりもアニメーターに任せた方が良いという当たり前の結論に落ち着ついていった現場が多いのでは無いだろうか。

    二つ目は綺麗な絵だけでは作品が売れなくなった。

    作品が売れるとは?どういう状態かというのは難しいのだが、ざっくり綺麗な絵だけでは人気は出ないという傾向がここ10年くらいでハッキリとしてしまった。

    高い値段でパッケージを売るという商売が全盛の時は、やはり綺麗な絵の作品というのはとても高い価値があった。

    しかし、今はパッケージは全く売れない。因果関係はよく分からないがパッケージ全盛時代よりは明らかに作画のクオリティは重視されていないと思う。

    かっこいいとか、きれいな絵をつくるというのはアニメーター出身の演出家に今でも一日の長があると思うが、そういうものを求める作品ばかりという傾向では今は無くなったという気がするし、スケジュールが改善されたことによって演出家のイメージをアニメーターが補佐できる現場が増えたのでは無いだろうか。

    そうすると、演出家の出自はあまり関係がない。

    アニメーター出身の演出家を重宝する傾向のスタジオはある。

    しかし一時期ほどに偏りは感じない。

    お客さんにとっては演出家の出自なんてどうでもいいことだと思うが、アニメーター出身の方が圧倒的に有利である、なんてことはないんじゃ無いかなぁ。

  • 秋なのに暑い【2023年11月04日】

    秋なのに暑い【2023年11月04日】

    先週は、すみだEXPOというアートイベントを見に行った。

    知り合いのDJが参加していたので顔見せがてらのつもりだったのだが、思いのほか楽しく見られた。

    各展示には制作したアーティストか関係者がいて来訪者がくると声をかけて展示についての話をしてくれる。

    現代美術はコンセプトがわからないと伝わりずらいものが多いが、逆に話を聞けば、ああと腑に落ちて俄然面白く見える。

    そもそも展示場所の家屋が長屋作りだったりで面白い。

    探検気分で展示場所を回れる。

    ギリギリの時間で行ったので全部は回れず、次はゆっくり見てみたい。

    いろんな人にも会えて非常に楽しかった。

    昨今、地域に根ざしたアートイベントが増えた気がするが、こういう雰囲気だったら他も見てみたいかもと思わせるものがあった。

    ここしばらく体調が悪く憂鬱だったが少し落ち着いてきた。

    季節の変わり目に体調が崩れるのは歳のせいもあり致し方ない。

    大病を患う様なことはないが、気力やら集中力やら体力やらを微妙に削られるので早めに医者に行って対処すべしとこの歳になって学んだ。

    ストレスもまた病の大きなきっかけだが、昔だったら平気な程度のストレスで体に変調をきたすのもまあ仕方ない。

    ストレスのない人生は無い。

    ゆるゆると新しい仕事も決まったりで、来年は多少忙しくなるかもしれない。

    今年は後半ほんとに暇だった。

    仕事は暇だったけどなんだか落ち着かない一年だったので、来年は心穏やかにありたい…無理か。

    仕事的にはというか、人生的にも来年からは新しいターンに入るんだろうと思う。

    次の10年は何をしているんだろう。